マスマスマズマズ研究ノート

数学を学ぶ一人の若者がたまに発言をします。
主に「お笑い」「数学」「ラジオ」を思考対象に更新中。
数学専用ブログCorollaryは必然に。もやってます。

富士登山の思い出の存在と一意性



概要

2022年8月7日(日)〜8日(月)に数学専攻の院卒の友人と富士登山を行った。富士登山に向けての情報収集・トレーニング・持ち物などの準備と当日の天気や体調を仮定し、富士山山頂で友人と数学を行ったときのいい思い出の存在と一意性を証明する。

動機

日本人が一生に一度は経験しておきたいものの一つとして、富士登山が挙げられることがあるが、実際に経験したことのある者はどのくらいいるのだろうか。別に富士登山をした人間は偉いとか思わないし、何なら私は自ら富士登山をしたいと思う人間ではない。仮にどこでもドアを持っていたと仮定しても、高山病対策のために数回に分けて使わないとならないので、面倒くさくて無限に後回しにしていただろう。

そんな私がなぜ富士登山をすることになったのかというと、2021年10月、友人に富士登山をしようと誘われたからである。誘いは本当に突然だった。その友人が私を富士登山に誘った理由は、私が山梨出身だかららしい。山梨県民ならば富士登山経験者(が多い)という主張の真偽はさておき、富士登山は広義の旅行とも思える。友人から旅行のお誘いをされることは滅多にないので、喜んで富士登山の約束をした。

記法と前提知識

「コロちゃん」および「私」でこの記事の唯一の筆者を表すことにする。コロちゃんは以下の性質を持つことが知られている:

  • 山梨出身
  • 数学好き
  • インドア派
  • 登山ガチ初心者

私と富士登山をした唯一の人物が存在し、これを「友人A」および「A」と書く。友人Aは以下の性質を持つ:

  • 九州出身
  • 大学院時代、若手研究集会で知り合った
  • スポーツの大会にも出場するバリバリのスポーツマン

Aとは研究集会の1年後くらいに東京で会った以来で、会うのはかなり久しぶりである。Aいわく、大学数学は忘れたと言っていたがおそらく偽である。

情報収集

富士登山をすると決めたからには、半端な知識で挑むことはできない。私の場合、富士登山の情報は以下を参考にした:

結局のところ公式サイトや信用できる経験者に聞くのが一番だと思う。富士登山の資料についてはkindle unlimitedで読めるものがあったので、惰性で登録している私にはちょうどよかった。専門店については、特に意味はないが、東京在住の数学徒なら明倫館が近くにある石井スポーツ登山本店をおすすめする。


富士登山の約束から数カ月経ち、2022年4月末にお互いの日程を調整し、登山日を8月7日〜8日に決めた。私がこの日までにした富士登山の準備は、富士登山の一般的な登山ルートは吉田ルートであることの確認をしたくらいであった(やる気あんのか?)。

トレーニング

富士登山に向けてトレーニングを開始したのは5月末であった。実際に行ったトレーニングは以下の通りである:

  • 5月、6月、7月に一回ずつ高尾山登頂
  • 1〜2時間程度のウォーキングorジョギング(週2、3回)

私が参考にした資料では、スクワット・体幹トレーニング(プランク)・呼吸筋ストレッチも推奨していたが、自己判断で行わなかった。インドア派の私にしては結構頑張った方だろう。

ちなみに、初めての高尾山はきつかった。上りの平均所要時間は約100分なのだが、私の場合は約120分かかり、自身の体力のなさを思い知った。登山未経験のまま富士登山をしていたら死んでいただろう。この経験のおかげで危機感が生まれ、最低限のトレーニングが続けられた気がする。また、ジョギングの休憩でポケモンGOをプレイすることも楽しみの一つになっていた。

持ち物と山小屋予約

山開きの7月に入ってから登山アイテムやら山小屋の予約やらを準備し始める。「登山靴」「ザック」「レインウェア」が登山の三種の神器と呼ばれているようだが、私はこのうち登山靴とザックは専門店で、レインウェアはAmazonプライムデーで購入した。登山アイテムは専門店で買うと安くはなく、三種の神器だけでも6万円はかかる。Amazonプライムデーですべてのアイテムを安く揃えることも可能だったが、登山靴とザックは専門店の店員と相談しながら自分に合うものを探すべきと判断した。レインウェアは素材とサイズに注意すればAmazonで大丈夫だろうと判断し、専門店よりも比較的安く買うことができた。その他多くの登山アイテムがAmazonプライムデーで揃えられたので、プライム会員ならぜひ利用したい。


山小屋の予約は遅い方だったかもしれない。7月2日に友人Aから「高い部屋しか残ってなくてヤバイ」と連絡がきたので焦ったが、山小屋をくまなく探して、そこそこ適切な料金で予約できた。ちなみに山小屋は七合目の山小屋で一番遠い東洋館を予約した。

登山前日

8月5日(金)の夜、コロちゃん宅に友人Aを招いた。比較的とっつきやすそうな内容で、山っぽい記号「$\wedge$」が出てくるという理由で、束論の話をした。

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なお、眠りにつこうとして数分たった頃、最小上界と最大下界の記号が通常とは逆になっていることに気づき、後悔が残る夜となった。

翌日の8月6日(土)は登山アイテムを買い足して、バスで河口湖へ向かった。河口湖の天気は曇天であった。さらに悪いことに、肝心の明日の富士山の降水確率は70%だった。よく見たら小さく雷のアイコンもあるので、雷雨だ⛈️。雨が降っていない間にせめての思い出でも残そうと思い、ボートに乗った。

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この写真、本来なら背景に大きく富士山が映るのだが、見事に雲で被覆されている。有限個の被覆なら取り除きたい。まあ、明日の天気は我々にはどうすることもできないので、この日の夜は安宿で入念にストレッチをして、酒を飲んでぐっすりと寝た。


富士山登頂〜山小屋

五合目

朝起きて天気予報を確認すると、なんと一日中曇りとなっていた。登れると判断した我々は河口湖駅からバスで五合目へと向かった。

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今にも雨が降りそうな天気だが、ここまできたら登るしかない。1時間ほど高地順応のため滞在し、午後12時半頃、富士登山へと向かった。


五合目〜六合目は普通の坂道という印象だったが、序盤からなるべく深く息をするのを心掛けた。Aはめちゃめちゃ余裕そうだった。

六合目

六合目からは$a_n=(-1)^n$を線で結んだような道になり、坂も分かりやすく急になっていた。六合目を少し登った所で休憩していると、曇りで変わり映えしない空に太陽が透けて見えてきたのを確認した。山の天気は変わりやすいとよく言うが、いい方向に変わっているようで安心した。

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登山を始めて1時間くらいだろうか、この辺から私は息切れと疲労との戦いを始めていたと思う。焦らず自分のペースで進んでいたが、それでもツアー参加の集団よりは若干早く登れていたので、遅すぎというわけはなかったと思う。Aの方はまだまだ余裕で、先へ進んでは私を待ち、進んでは待ちを繰り返していた。私目線だとマリオ64に出てくるウサギのようだった。ケツワープで追い越したいと思った。

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友人A目線の私(大変そう)

登山を開始して2時間弱、花小屋という最初の山小屋に到着。ここから先は本格的な岩場になり、人が渋滞してきた。

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個人的には岩場を登る方がきつくなかった。両端のチェーンは手すりではなく、むしろおさわり禁止である。疲れたときや渋滞待ちでついさわってしまうので注意しよう(経験者は語る)。

七合目

14時半頃、七合目に到着。

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この先もずっと岩場を登る。このときの天気は晴れと曇りが短い間隔で切り替わっていた。

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雨の心配がほとんどなく、曇りのときは涼しかったので、非常に登りやすい環境だった。これはラッキーだったと思う。

山小屋(七合目後半)

15時頃、予定よりも30分ほど早く山小屋に到着。心配していた高山病らしき症状もなく、順調な登山となり一安心。部屋にザックを下ろしてしばらく休憩し、16時半に夕飯を食べた。

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味噌けんちん汁定食
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夕飯後の記念撮影

言い忘れてたが、山頂でご来光を見る計画なので深夜に山小屋を出発する。18時頃にボディーシートで全身を拭き、明日に備えて横になった。

山小屋〜山頂

山小屋出発

深夜1時、起床。ほとんど至る所眠れなかった。主な原因は、19時くらいまで今日の登山の振り返りとTwitterとポケモンGOをしていたこと、睡眠が深くなる直前にヘッドライトの電池残量が気になって充電を始めたこと、0時頃から同室の登山者のガサゴソと準備する音が気になったことの3つである。眠い目を擦りながらもゼリー飲料やパンなどの軽食を済まし、1時半に山小屋を出発した。

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出発時の夜景

山小屋から先の岩場は昨日よりも一段と険しくなっており、視界も狭いので難易度は間違いなく上がっていた。落下事故には十分注意して確実に登るよう心掛けた。

八合目

バンプが望遠鏡を担いでった頃、八合目の案内板が見えた。

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案内板によると、頂上まで約180分らしい。事前調べによると、ご来光は4時47分。間に合うか微妙な時間である。せっかく大袈裟な荷物しょってきたのだから、ご来光は頂上で見たい。休む時間はあまりない。始めようか、オーイエー登山(深夜テンション)。

とはいうものの、道は険しい。呼吸もさっきから荒い。そんなとき、友人Aが数学しりとりをやろうと言いだした。数学しりとりは大学生のときに2、3回やったとき以来であり、○○定理の「り」攻め、○○法や○○(関)数などの「う」攻めになりがちなゲームであることは知っていた。

私「数学しりとり?いいね、やろう」
A「じゃあ、数学の『く』から」
私「『く』かあ…『クンマーの判定法』
A「う?えーっと…」

とても楽しかった。また、しりとりは適度に頭を使うので、登山の辛さを紛らわすことができて非常に有効だったと思う。

九合目

3時40分、長考で数学しりとりが自然消滅した頃、ようやく九合目に到着。

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道が狭くなり、渋滞がすごい。腰を下ろして休める最後のスポットにはスタッフがいて、
「あと少しで山頂です」
「ここまで来た人で諦めて下山した人は誰もいません」
「ご来光には十分間に合います」
と案内してくれていた。ありがたい。さらに運がいいことに「こんなにいい天気はなかなかありません」と言っていた。ご来光の美しさに期待を膨らませながら、最後のもうひと踏ん張り。

富士山山頂

ご来光の瞬間

4時15分頃、ついに山頂に到着。長い戦いだった。そして、ふつうに寒い。場所を確保し、友人Aが楽しみにしていたあったかいコーヒーを飲んだ。


しばらくすると、果てしなく続く雲海の先に橙の光が見えてきた。
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隣の登山者がスマホ用の三脚でタイムラプスの撮影を始めたので、マネした。このままだと普通の写真が撮れなくなってしまうと一瞬思ったが、念のためiPadも持ってきていたので大丈夫だった。


じわじわと、じわじわと、太陽が昇ってくる。そして、いよいよご来光の瞬間が訪れる(ご来光のネタバレ注意)。











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ライコウご来光 with ゆかいな幻ポケモンたち










ポケGOのやりすぎなのはともかく、いいものが見れて大変よかった。




日本一高い数学教室

思う存分写真を撮った後は、私が一度やってみたかったことを実行した。それは日本で一番高い所で数学をすることである。考えてきた内容は、通りすがりの登山者でも理解でき、山に関連する数学ということで \begin{alignat*}{6} & & & & 1 & + & 2 & = & 3 & & & & \\ & & 4& + & 5 & + & 6 & = & 7 & + & 8 & & \\ 9 & + &10& + & 11 & + & 12 & = & 13 & + & 14 & + & 15 \end{alignat*}が延々と続く数式の解説にした。

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うむ、これは間違いなく日本一高い数学だ。日本初かどうかは知らないが、少なくともこの日、富士山山頂で数学をしたのは我々だけである。以上より、我々の富士登山のいい思い出の存在と(富士山山頂で数学をした集団の)一意性が示された。

なお、反省点は字が汚くなってしまい、山っぽく見えなかった点だろうか。スケッチブックはスマホ用三脚に表紙をガムテープで張ったのだが、紙が曲がってうまく書けなかった。あらかじめ紙芝居形式で準備しておけばよかった。

下山後

5時40分頃、やることはやったので下山を始めた。下山中の景色も素晴らしかった。

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下山はありえないほどハイペースで下っていき、8時30分くらいに五合目に到着した(登りの約半分の時間)。その後はお土産を買い、河口湖で食べ損ねていた吉田のうどんを食べ、甲府のホテルへと向かった。


甲府のホテルに着いた後は温泉に浸かり、夕飯はビルの最上階でステーキを食べた。周りは綺麗に着飾ったカップルばかりで、登山靴と半袖短パンで来た我々はドレスコードが最悪だった。仕舞いには夜景を一望できる場所にAと2人だけの場所に移動し、デザートを食べた。


我々は最後に盛大にミスをしたようだ。これ、オトナのデートプランじゃん。嫌でも漂ってしまう“いい雰囲気”を壊すために
「あそこにある『いちやまマート』って知ってる?」
とローカルスーパーの話をした。


そそくさと部屋に戻った我々は、Aが買ってきた「はらぺこバハムート」というボードゲームや将棋を楽しんだ。しかし、この時点で本日の起床時間が20時間に迫ろうとしており、お互い半分寝ながらの勝負となってしまった。下山後は起床時間も考えた無理のない計画を立てよう。


翌日は甲府駅周辺を軽く散策し、14時頃に解散して実家に帰った。

まとめ

そんなわけで、富士山山頂で数学(とポケモンGO)をしたというお話でした。せっかく本格的な登山グッズを揃えたので、しばらくは登山を趣味にしていきたいなぁと思います。それでは。


thank Q for rEaDing.φ(・▽・ )

とある主婦さんからの「数」の質問




知り合いの主婦さんから頂戴した数学の質問が興味深かったので、先日Twitterで共有しました。



「なぜ2は素数なの?」

なるほど〜

2は半分に割れると思えるので素数っぽくない気持ちも分かります。さらに「1を除くなら、2も除いてもいいんじゃないの?」といった意見もいただきました。これにも思わず

なるほど〜

と思いました。確かに例外は除きたいですもんね。

今日の話題はこれではないので、この話の回答集はツイートのリプライ等をご覧ください。





本日は同じ主婦さんからの別の質問を紹介したいなぁと思います。主婦さんの質問は次の通りです:

「水面がちょうど0で、水面より上がプラスで、水中がマイナスのイメージなの。もしそこから水深が10m上がったとしたら、10だった所が0になるけど、これでもいいの?」

kouji_ganpeki


ん〜なるほど?


僕は最初、シンプルに

「10を改めて0と考えることはできます」

と答えました。基準となる高さを決めるのは自由ですし。

でも、何か納得していない様子でした。話を詳しく聞いてみるとこんな疑問に辿り着きました:

「まっすぐに並んだ数があって、その中のどれを0と思ってもいいの?」


なるほど。


すべての数が0になり得ると思うと確かに変な感じがします。この質問は「数とは何か」特に「0やマイナスの数とは何か」について再考させられるいい質問だなと思いました。

あと、僕は主婦さんの「まっすぐに並んだ数がある」という視点が気になりました。おそらく数直線のイメージなのでしょう。

その用意された数直線の目盛りを自由にスライドしてもいいのだろうか?



もし良いのなら、最初に与えられた数は一体何だったのか?

疑問の根源はそこなのではないかと思ったので、僕は「整数の構成」について話してみました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

そもそも数というのは、最初に「0」を定めて、そこから順に1、2、3…と「次の数」を決めていきます。この自然数が決まってようやく-1、-2、-3…という「負の数」が決まります。「-2」というのは文字通り「2があってこそ、-2が存在する」んです。この過程を経て、「まっすぐに並んだ数がある」んです。

数直線ってあるじゃないですか。あれを見てると、あたかも「最初から数がすべて用意されている」ように見えますが、そうではないんです。「まっすぐに並んでいる≪何か≫」があって、その中の基準となる0を決めて、1、2、3…を決めて、-1、-2、-3…という負の数を決めてできるのが「数直線」なんです。

水面の話に戻すと、どの高さを0と決めるのは自由です。そこを基準に高さ1m、2m…が決まって、-1m、-2m…が決まっていきます。ただそれだけです。最初から数が用意されているわけではないので、0をどこにするかは自由です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

実際の会話はもっと遠回りしていましたが、僕が主婦さんに説明した内容をまとめるとこんな感じです。その主婦さんは納得してくれたようでした。



とても楽しい数学雑談でした。

thank Q for your rEaDing.φ(・▽・ )
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コロちゃん(1990〜)は日本の暇人。大学時代の主な作品に『食べられないパンに関する数学的考察』『大井語辞典』がある。お笑いにまあまあ詳しく、数学とそれなりに向き合っていて、ラジオが少し好き(特におに魂)。「マスマスター」と名乗りラジオ番組にネタを投稿していた時もあった。

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